獣医師みやも&ブリ太郎のすったもんだ日記

愛猫ブリ太郎と、動物病院の日常やどうでもいい日々を綴ります。

犬の病気

こんばんは。
ついさっきまでブリとあれの取り合いをしておりました。
猫も結構好きなんですよね、納豆…



さて!
前回は子宮の病気のエースの話をしました。
今回はうって変わって男の子の話です。

その名も
『潜在精巣』

でもこちらは病気…ではありません。
ではこの潜在精巣とやら、いったい何なんでしょうか?
(今回は犬の例について書きます)


 潜在精巣って? 
犬は、生まれたばかりの時点では精巣はまだお腹の深い位置にあります。
正常であれば生後1か月までの間にお腹の中から陰嚢まで降りてきますが、何らかの理由でその途中で止まってしまっているのが潜在精巣です。

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つまり、通常の場所(陰嚢内)に精巣が降りてきていない状態のことをそう呼ぶんですね。

潜在精巣には2つのタイプがあります。

①腹腔内陰睾
②皮下陰睾


単純なもので、睾丸が留まっている場所の違いだけですね。
先ほど、子犬の睾丸はおなかの中からゆっくり降りてくると言いましたが、睾丸が陰嚢に降りてくるまでには決まった道順があります。
おなかの中にあった精巣は、鼠径部(足の付け根)から出て皮下を通り、陰嚢に到着します。

潜在精巣たちはその道順の途中でトラブルがあったわけですが、一番引っ込み思案なのが①のパターンですね。
なんせおなかの中からでてこないんですから…
せめておなかの中からくらいは出てきてほしいところ。
だってその後が大変なんですもん(後で書きます)

では②は?
これは少し外にでる気があるみたいですね
根っからの引きこもりではないようです。どちらかというとこちらの方が多いです。

また、ほとんどの場合は片側です。
両側の場合はむしろ形成不全(精巣が作られてない)を疑います。
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 原因は? 

原因ははっきりとは分かっていませんが、遺伝が関係しているとされています。
精巣降りてくるのが途中で止まるだけで、それ以外には体に異常がないのがほとんどです。


 症状は? 

潜在精巣自体には、特に症状はありません。
両側となれば生殖能力には期待できませんが、多くは片側性なので生殖能力に問題はありません。(繁殖には用いない方がよいとされていますが…)

ただ、通常の生活を送っていくには支障を来さないものですが、放っておくと問題があります…。


 潜在精巣の問題 

突然ですが、なぜ精巣はあんなところにぶら下がってるのでしょうか?
おなかのなかにしまってた方が安全だと思いませんか?
だって内臓のひとつなのに…

その理由は、精子が活発になれる温度にあります。
精子の適温は32~34度。体温よりちょっと低いくらいですね。
精子は熱に弱いので、温度が高くなると途端に精子は元気がなくなります。
さらに体温に近い温度に長時間さらされると、精子の生産にも影響を及ぼします。

これが潜在精巣が機能しない原因ですね。

機能しないだけで大人しくしているならいいのですが、
この潜在精巣、厄介なことに 腫瘍化 することが多いのです。
正常な精巣と比べると、精巣腫瘍になる確率は13倍にもなるとの報告もあります。


後に精巣腫瘍について触れようと思いますが、精巣腫瘍は結構キケンです…


 治療方法は? 


毎度おなじみ、去勢手術ですね。
ただ、いつもの去勢手術とはちがいます
場所が違うので、探さないといけません…。

分かりやすい皮下陰睾ならば触って分かるので問題ないのですが、問題は腹腔内の場合。
腹腔内は触っては分からないのでおなかを開けるしかありません。

おなかの中も、簡単に見つかる場合もあれば、なかなかなかなか見つからない場合もあります。
鼠径輪(内股の部分)に引っかかっているパターンが一番大変ですね。
ギリギリ皮下には出ていない…というわがまま睾丸です。

普段ないものを探すのは、いつもあるものを切除するのと比較にならないくらい難しいです…
(入ったばかりの頃、先輩に言われました。)



潜在精巣…
切除に時間がかかったり、いつもと違うところに手術跡ができてしまう場合もありますが、
放っておいていいものではありません。
もし自分の子が潜在精巣だと気づいた場合は、なるべく早く病院で相談してくださいね。


こんばんは!
ただいま出先のネカフェにてこちらを書いております。
一度そういうのやってみたかったんですよね♪
コンソメスープ飲みながら完全に浮かれております 笑


さて、前回子宮蓄膿症がどんなヤツかについて書きましたが、今日はその治療と予防方法についてです。
あ、ちなみにおおよその予想はつくと思いますが、この病気に関しては治療法と予防法は基本同じです。
説明も一瞬で終了します。笑


 治療方法 
ズバリ、避妊手術。(正確には卵巣子宮摘出術ですが)

……言うと思ったでしょ。
でもほんとにそうなんです。

開腹をして膿の溜まった子宮を切除する方法になりますが、
それが1番確実で早く、治療効果の高い方法になります。
唯一根本的な原因を取り除く方法ですからね。
これが1番です。
前回説明した通り、この病気はとても緊急性の高いものですから、見つかったらその日もしくは翌日には手術を行うことが多いです。



でも
『この子はどうしても赤ちゃんを産ませたい!他の方法はないんですか?』
という飼い主さんもいます。

もちろん子宮を切除してしまうと、二度と妊娠することはできませんから
その場合は注射薬(ホルモン製剤)を使って子宮から膿を排出させる&抗生剤で細菌を退治
という方法をとることもあります。
ですが……

正直おススメしません。


というのも
ほとんどが早かれ遅かれ再発するからです
また、強制的に子宮から膿を排出する方法になるので、開放性の子宮蓄膿症にしかこの方法は使えません。
さらには、他の治療薬と比較するとやはり副作用が多いように感じます。
副作用は下痢・嘔吐など、目立ったものはないですが、果たしてこれが注射の副作用なのか、病気の影響なのか判別しにくいところも難点ですね…


私が診ている子(虚弱体質でどうしても手術ができない)でも、この治療方法でなんとか体調を維持している子もいます。(定期的に繰り返しますが…)
ただ、その子たちに関しては飼い主さんがこの病気に対して深い知識と理解を持っていて、発症の兆候があるとすぐ連れて来てくれるからできることでもあります。

状態が悪く、一刻を争う場合は治療の選択の余地すらありませんから…


結論としては
治療方法の基本は手術
(ただし状態次第では他の方法もないわけではない)

です!

 予防方法 

さて、ということは予防は……?

ええ、もちろん避妊手術でございます!

いい加減しつこいですよね 笑

でも、大事なことなのでもう一回説明します。
子宮蓄膿症は 避妊手術 で100%予防できるんです!

方法同じなら、なってからでもいいんじゃ…
と思われるかもしれませんが、それは大きな間違いです。

もちろん治療方法の卵巣・子宮摘出術と避妊手術は基本的に方法は同じですが、危険性には天と地ほどの違いがあります。
ただでさえ状態の悪い子に麻酔をかけるんですから、体への負担は相当なものです。
実際手術をしたって助からない子もいます。

費用だって数倍も違ってきます……


最近は飼い主さんも意識が高くなってきていて、適切に病気の予防ができている子が増えてきましたが、それでもこの病気で辛い思いをしながら病院に来られる子もまだまだ多いです。


この病気に関して私が言いたいのは一つだけです。
子宮蓄膿症は100%予防できる病気です。
赤ちゃんを産ませる予定がないのなら、早めに避妊手術を受けさせてあげてください。
予防できる病気で死なせてしまうことほど、悔しいことはありません…。


長々とありがとうございました!

こんばんは!
本日やっとしっかりした掃除機を買いました。
いままでクイックルワイパーでごまかしていたのでめっちゃ快適です…


さて、本日は犬猫たちにとっても多い 子宮蓄膿症 についてです。

 子宮蓄膿症って? 
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子宮蓄膿症はその名の通り 
子宮に膿が貯まる病気
です。
この病気は私たちにとってとっても馴染み深く、そして怖い病気のひとつです。
6歳以上の未避妊の女の子で、最後の発情から2か月前後という時期に発症しやすく
赤ちゃんを産んだことがない、もしくは長くお産を休んでいる子で起こるとされています。


 症状と診断 
子宮蓄膿症の症状は様々です。

・元気、食欲がない
・嘔吐
・下痢
・多飲多尿(たくさん水を飲んでオシッコをする)
・おなかが張る
・陰部からアズキ色の液が出ている
・体が熱い、もしくは冷たい


などなど…あまり特徴的でないものが多いですね。
症状によっては気付かれず、病院に来たときにはとっても酷い状態ということもあります。

症状のひとつにある『アズキ色の膿』が出ている場合であれば、異常に気付かれることが多いですが、
全部の子で膿が出るとは限りません。
これが困ってしまう事のひとつです。

子宮蓄膿症には閉鎖型開放型があります。
膿が陰部から出てくるのは、子宮口が開いている『開放型』
子宮口が大きく開いていればいるほど、陰部からたくさんの膿が出ます。ただ、見た目は派手ですが、こちらの場合はそこまで重篤な症状を示しません。

ですが子宮口がぴったり閉じている『閉鎖型』はどうでしょうか?
こちらは体の外に膿が出せないので子宮の中にどんどん貯まってしまいます。
大型犬では子宮に3ℓもの膿が貯まってしまっていた子もいます。 おそろしや…

また、こちらは膿が長く体内に留まるぶん、症状も重症化しやすく危険です。
膿が出ないので発見が遅れるのも厄介なポイントですね


さっきから重症化重症化って言ってますけど、実際どんなことが問題になるのでしょうか?
子宮蓄膿症は早くに発見されて治療できればほぼ確実に完治できる病気です。
ただその反面、発見が遅れたり、治療をせずに放っておけばほぼ確実に死に至る病気でもあります。


その命を落とす原因となるのが 敗血症 ですね。
敗血症は、そのまんまですが体が細菌に負けた状態のことです。(血液中への単純な細菌の侵入は菌血症と言って区別します)

普段生き物は自分の免疫で細菌と戦っていますが、体力の低下やホルモンバランスのせいで細菌が免疫に勝利してしまうと…どんどんどんどん体内で細菌が増殖します。
大人しくしていればいいものを…細菌は増殖に伴って毒素を産生し、ショック状態(エンドトキシンショック)を起こしてしまったり、DIC(播種性血管内凝固)を起こして最終的に多臓器不全を引き起こします。
こうなったらもう最悪。治療へ反応する確率はガクッと落ちてしまうのです。


敗血症はどんな感染症でも起こりうるものですが、とりわけこの子宮蓄膿症は起こすリスクが高いとされます。
下の原因の項で書いてますが、ただでさえ感染しやすい状態の身体で起こっている病気ですからね…
進行もとても早いです


また、この病気に関しては、膿を溜めた子宮が破裂する というゾッとすることも起こりかねません。
その場合はお腹の中に細菌をまき散らしてしまいますから、大至急開腹と洗浄が必要になります。
ただ、この状態にまでなってしまうと…正直助からないことが多いです。


ではではこんな恐ろしい子宮蓄膿症、診断はどうするでしょうか?
小動物、特に犬の子宮蓄膿症はとても多いです。
上に挙げたどれかの症状&まだ避妊手術をしていない女の子
とあれば、私たちはまずこの病気を疑って検査をします。

というのもこの病気、比較的簡単に除外ができるからです。
この時にとっても活躍してくれるのが エコー(超音波)
明らかなものであれば基本的にエコー検査で診断が可能なんです。

怪しげな症状を示す女の子が来たら、私たちはまずエコーを当てて確認をしています。
もしも子宮蓄膿症と診断されれば、それに加えて血液検査を行って重症度の判定を行い、大急ぎで治療を始める、といった流れです。(急にバタバタします…)


 原因 
直接的な原因は子宮に細菌が侵入して繁殖することです。
ですが、通常の子宮内は清潔で、多少の細菌が入ったくらいでは負けません。
(膀胱と同じですね)

しかし、そこで影響してくるのがホルモンバランスです。
犬の発情後2カ月という時期は、女の子ホルモンの影響で感染を起こしやすい状態にあります。
子宮蓄膿症で悪さをしているのはほとんどが大腸菌ですから、この時期に陰部から細菌が侵入することでこの病気が発生してしまうんですね…


ちなみに別の動物の例を挙げると、牛ではほとんど発症しません。
牛でお産を経験しないことの方が珍しいから当たり前かもしれませんが、発症しても軽症で済むことがほとんどのようです。


同じ病気でも、動物の種類によって全然違ってくるので面白いですね
罹った動物からしたらたまったもんじゃないですが…




次回、治療・予防に続きます!

こんばんは。
嵐ファンが心配な今日この頃…

一昨日はざっくりと膀胱炎の話をしましたが、今回はその原因のひとつである
『尿路結石』について。


 尿路結石って? 
尿路結石は尿中のミネラルが結晶化したものを言います。
動物の身体にはいろいろな種類の結石が作られますが、尿路にできたものはまとめて『尿路結石』と呼ばれます。
その中でも、作られる場所によってそれぞれ名前が異なります。

・腎臓=腎結石
・尿管=尿管結石
・膀胱=膀胱結石
・尿道=尿道結石


尿路結石はこの4つに分かれます。
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 どうやってできるの? 
実は結石の作られ方は真珠の作られ方に似ています。
真珠は2枚貝の中で、砂粒などの核の周囲に真珠層が何層にも重なって成長しますよね。

尿路結石の場合は、
剥がれ落ちた膀胱壁の細胞細菌の死骸真珠層はカルシウムやマグネシウムといったミネラルです。
①細菌の感染や炎症で、結晶の中心となる核ができる。
 (なくてもできちゃうこともあります!)
②オシッコ中のミネラルがどんどん蓄積して大きくなる…
といった流れですね。

オシッコの性状は食べ物が大きく影響します。
食べ物からたくさんのミネラルを摂ると、余分なミネラルは尿中に排出されます。
ミネラル同士はお互いにくっつく性質を持つので、少しづつ結晶化してしまうんですね。
ミネラル自体はとっても大事な栄養素ですが、なんでも摂りすぎはダメ

結石が作られるのに適したオシッコの状態が長く続くと…
場合によっては膀胱いっぱいにおおきくなってしまうこともあります

まとめると、結石の原因は

・オシッコのpH(酸性・アルカリ性の度合)の偏り

 →それぞれのミネラルに適したpHがあります。
・濃いオシッコが長く膀胱に留まること
 →ミネラルの濃いオシッコが長く留まるほど、結晶化しやすくなります。
・尿中のミネラルが高くなること
・尿石の核(結晶の中心)があること
・尿路感染
 →細菌は増殖する際にオシッコをアルカリ性にしてしまいます。

ですね。

 結石いろいろ… 
結石には実は色々な種類がありますが、犬猫での2トップはこの2つです!

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最も多いのがこの子!
本名はリン酸マグネシウムアンモニウムっていうちょっとややこしい石です。

アルカリ性のオシッコでできやすく、中には数センチまで大きくなってしまうこともあります。
棺桶型の結晶が特徴的ですね。
大きくなると大変ではありますが、このストラバイトのいいところはオシッコを酸性にすると割とすんなり溶けてくれるところです(もちろん例外はあります)。
なので手術まで行わずに、内科的に治療できることが多いですね。
結石自体は表面が滑らかで角ばっていないものを作ります。

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これは…2番目に多い結石ですが、ちょっと厄介者です。
というのも、なかなか溶けないんですね
最終的に手術で取らなくてはいけなくなることが多いのがこの石です…

原因は名前の通り尿中のカルシウムシュウ酸です。
シュウ酸はもともとカルシウムと仲良しなんですが、腸の中で2人が出会うと結合してそのまま問題なくウンチの中に排出されます。
しかし、脂肪分の高い食事を摂るとカルシウムが脂肪に結合してしまい、行き場を失ったシュウ酸はオシッコの中にでてしまうというのです

この石の原因としては色々な因子がありますが、ヒトの食事を与えたりすることが要因のひとつのようですね。
この石は巨大化することは少ないですが、角ばった痛そうな結石に成長することが多いです。


 予防方法と治療法 
基本的に尿路結石の治療は 食事 です。
結石の種類によって原因となるものは違いますから、それぞれに合った食事を使います。

ストラバイト
この石は、先ほども書きましたがオシッコを酸性にすることがとっても重要です。
あとは尿中もマグネシウム、リン、アンモニウムの濃度を抑えること。
難しいことを言ってますが、ストラバイトについては多くの研究がされているので、専用の処方食もたくさん作られています。
正直、この処方食を使うことが最も簡単で体に負担がかかりません。

ただ、ストラバイト用の処方食は塩分が添加されていることが多いため、腎臓病・心臓病の子には勧められません。
いずれにしても獣医師からの処方が必須となります。


シュウ酸カルシウム
はっきり言って治療は難しいです。
教科書では食物中のカルシウムやビタミンDを抑えることシュウ酸の前駆物質であるビタミンCが添加された食物は与えない
などとありますが、実際なかなか対処できません。
また、この石に関しては、オシッコの酸性化は高カルシウム尿を助長するので、適していません。
今はストラバイトにもシュウ酸カルシウム結石にも対応した処方食は作られていますが、基本的にこの2つの結石の治療方法は逆なんですね。


この結石に対応するフードを作るのはとっても大変だと思います。
フード会社さんの日々の努力には頭が下がります……


昔から現在に至るまで、とっても多い尿石症。
効果的な処方食がどんどん開発されてはいますが、やはりまずは作られないことが1番!
お家でできる最も簡単な予防方法は お水を飲む量を増やしてオシッコをどんどん出す事 です。
少しの工夫で飲水量がグッと増えるかもしれません。


ピュアクリスタルで水を飲む!←こちらも参照ください。

こんばんはー
最近おでこがかゆいです。
成長するのかな?



さて、昨日は犬の会陰ヘルニアというのがどういった病気なのか書きました。
(ていうか『えいいんヘルニア』って変換できないんですね…ずっとコピペしてます)
今日はその原因についてです。


会陰ヘルニアの原因はちょっと複雑です。
なんせ本来あるべきはずの筋肉が薄くなってしまうんですからね…謎すぎます。

会陰ヘルニアが起こりやすいのは、中~高年齢の未去勢の小・中型犬、
つまり タマタマがついたおじいちゃん犬(小型) です。

会陰ヘルニアの原因として今言われているのは

①雄性ホルモン(男の子ホルモン)
②しっぽの運動性
③腹圧の上昇

この3つです。
①雄性ホルモン
これは現在最も重要視されているものです。
実際、うちの病院でも未去勢の男の子で発生しているのが圧倒的に多いです。
もちろん女の子でも発生することはあるのですが、私はまだ出会っていません。

これについてはたくさんの報告がありますが、アンドロゲンまたはテストステロンという2つのホルモンが関連しているとされています。(どちらも男の子ホルモンですね)

でも実はまだ関連が示唆される(可能性がある)という段階です。
ただ、これまでの報告からも日々の診察からも、早くに去勢手術を受けた雄犬と比較して、未去勢の雄犬の発生率が高いのは事実です。
以前の記事 避妊・去勢手術の必要性 でも触れましたが、会陰ヘルニアは去勢手術で予防できる病気のひとつとして扱っていいと思います。

会陰ヘルニアの手術の際はほとんどのコで一緒に去勢手術を行いますが、同時に去勢手術を行わなかった子達はヘルニア再発率が2.7倍高かったとも報告されています。
このことからも、少なからず男の子ホルモンが関連していることが考えられますね。


②しっぽの運動性

会陰ヘルニアの主な原因は、肛門挙筋尾骨筋が薄くなってしまうことにありますが、
これらの筋肉は尻尾の運動とも深く関係しています。

実際、好発犬種(よくこの病気が起こる犬)としてウェルシュ・コーギー、ボストンテリア、ボクサーといった断尾されている犬種や、M・ダックス、ジャーマン・シェパード、シェルティといった尻尾の運動性が低い(あんまり激しく尻尾を振らない)犬種が挙げられてますし、
逆に尻尾を激しく振りまくるレトリーバー達は発生頻度が極めて低いとされています。

あと、これはちょっと面白いなと思ったんですが、断尾を行ったコーギー犬は、断尾を行わなかったコーギー犬よりも明らかに発生頻度が高かったんですって。
 
尻尾ブンブン振れば鍛えられるんですかね…
やっぱ結局が筋トレがものを言うのでしょうか。


③腹圧の上昇

これは分かりやすいと思います。

そもそもヘルニア孔(穴)ができる原因としてはホルモン等かもしれませんが、
その穴からお腹の中のモノが脱出してしまうのを助長するものとして、
この『腹圧の上昇』が挙げられます。
腹圧の上昇とは、お腹に力が入ってしまうことです。

どういう時に腹圧って上昇するのでしょうか?
犬でいうとやはり

吠える
怒る


の2つが大きいですね。
実際、よく吠える・怒る子で発生が多いように感じます。


……これらが主な原因たちです。
②③については私たちではどうしようもないことかもですが、
①についてはどうでしょう?私たちの手で取り除くことが可能ですよね。

現時点では①が最も大きな原因だとされているので、会陰ヘルニアの予防については去勢手術はとても有効です。

実際に会陰ヘルニアになってしまったら、基本的に治療方法は手術です。
会陰ヘルニアの手術って結構大変なんです。
お金だって結構かかります。予防できるならしたいですよね…

やはり、去勢手術は早めにするに越したことはない!
会陰ヘルニアの手術をするたびに思うのでした……

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ちなみに猫ではほとんど起こりません(外傷を除いて)
よかったね!

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