獣医師みやも&ブリ太郎のすったもんだ日記

愛猫ブリ太郎と、動物病院の日常やどうでもいい日々を綴ります。

こんばんは!
今日はセンター試験ですね…
あの緊張感、思い出すだけでぞわぞわします。



さて、今日は
会陰ヘルニア
について!

さてさて、同業者の方はさておき、みなさんは会陰ヘルニアについてご存知でしょうか?

ヘルニア
といえば有名どころは 椎間板ヘルニア ですね。
ヘルニアとだけ聞くと多くの場合これを連想するのではないでしょうか。


ですが、実はヘルニアはたくさんの種類があります。
鼠径ヘルニア、臍ヘルニア、陰嚢ヘルニア…
そもそも『ヘルニア』の言葉の定義は
体内の臓器等が、本来あるべき部位から『脱出・突出』した状態
を言います。

なので、発生する部位によって病気の名前も違ってきます。
今回はその中の『会陰ヘルニア』について。

会陰(えいいん)ヘルニア…
言葉通り会陰部に発生するヘルニアですが、病態としてはとっても分かりにくいものです。

全ての哺乳類には肛門がありますよね。
肛門周りや直腸はたくさんの筋肉で支えられています。IMG_0848

会陰ヘルニアは、この直腸を支持する筋肉たちがとある理由で萎縮することで発生します。
筋肉たちが萎縮してしまうと隙間(ヘルニア孔)が空いてしまい、そこからお腹の中の脂肪だったり臓器だったりが出てきてしまうんです。

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簡単な絵ですが、発生が多いのはここ(白矢印)です。
今回は脱出する臓器で1番多い、直腸で説明しますね。

正常の子の場合…
直腸を支える筋肉がしっかりしているので、基本的に直腸は肛門までまっすぐ走っています。
そのためスルンとうんちが出てくるんですね。
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しかし、この直腸周囲の筋肉が萎縮してしまうと…

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萎縮した筋肉の隙間から、おなかの中の臓器(直腸、膀胱)や脂肪が出てきてしまいます。
直腸がはみ出てしまうと、少しずつそのスペースに便が溜まってしまい…

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最終的には自力では出せない程になってしまうのです


でもこの会陰ヘルニア、やっかいなのは初期には症状をほとんど出さないこと。
いや、進行していて大きな隙間が空いていても直腸や膀胱などの臓器が出てこない限りが気付かないことがほとんどです。

大体の飼い主さんは、
『最近ウンチが出にくい…』
『肛門の横が腫れてきちゃって…』

と言って来られます。

ほとんどの場合は直腸が脱出してウンチが溜まってしまうことで肛門の横がもっこりしてしまうんですが、これは肛門に指を入れて摘便すれば一時的に症状は改善します。
最悪なのは
膀胱が脱出してしまう場合
ですね。

膀胱が挟まってしまうと、最悪オシッコが出なくなってしまいます。
全ての動物にとってオシッコはとっても大事!
丸2日もオシッコが出なければ、急性腎不全になってしまい命に関わります…。

全ての病気に共通しますが、
オシッコが出なくなってしまったらすぐ病院へ!!
が鉄則です。

さて、そんな色んな症状を出す会陰ヘルニア。
どうしてこんな厄介なことが起こるのでしょうか。


明日はその原因について書きます…。
ではおやすみなさい~
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こんばんは!


今日の手術は、2kgのトイプードルの骨折の整復でした…

トイプードルってかわいいですよね。チワワもポメラニアンもとっても人気です。
最近は特に、小さな犬種が人気の傾向にありますね。

小さなワンコが人気な理由はよくわかります。仕草もなんかころころよちよちしてて可愛らしいですもんね。
でも、彼らには大きな欠点があるんです…。


そのひとつは
めちゃくちゃ骨折しやすい
こと

犬の骨折で最も多いのは前肢です。
身体の構造上、犬たちは体重の7割を前肢で支えているのでどうしても負担がかかりやすくなってしまうのです。
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犬の前肢は、基本的には人と同じ構造です。
この中で最も骨折を起こしやすい部位というのが、
橈骨・尺骨
人でいうと手首から肘までの骨です。

小さな犬たちの問題は、とにかく骨が細いこと…
今日手術をした2kgのトイプーちゃんの骨(橈骨)はなんと4㎜です。
割り箸よりも細い骨で、あの子たちは走ったり飛び跳ねたりしてるんですよね。すごい…

もちろん生き物の骨って優秀なので、そう簡単には折れません。
よくしなって衝撃を吸収するので、場合によっては鉄よりも丈夫なんです。

でもそれにも限界があります。
高いところから落ちてしまったり、うっかり踏んでしまったり…
思いがけなく大きな負担が一点にかかると、丈夫な骨もポッキリと折れてしまいます。
細い骨の方が折れやすいのは言うまでもないですよね。
なので私たちも、小さな子達を病院で保定する時はとっても気を使います

狭い日本では飼いやすい小型犬が人気なのは当たり前。
私もシーズー犬をこよなく愛しております。
ただ、極端に小さな子はいかがなものか…
小さければ小さいほど採血も留置も難しくなりますしね。


『もっと大きくてしっかりした子達が増えてほしいなー…』
と心の奥底では思っております。


こんばんは!
今日も今日とて寒いですね…
私はこたつに入ってすべらない話見ながら書いております。

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今日のテーマはとある腫瘍の話。
実は今日の手術はこれの切除でした。その名も『肥満細胞腫』

突然ですが、みなさん肥満細胞腫ってご存知ですか?
最近は有名になってきて、ご存知の方も増えてきましたよね。
でも
『〇〇ちゃんのこのできもの、肥満細胞腫ですね。』
と言うと
『あら肥満?おデブちゃんに多いのかしら。うちの子太ってるからね~』
と笑いながら言っている飼い主さんも少なくありません。

うーん。名前があまりよろしくないかもしれないですね。

肥満細胞腫は肥満・脂肪とは全く関係ありません
そして可愛い名前に反して、この腫瘍はほとんどが悪性(ガン)です。


肥満細胞が活躍する場面で有名なのは『アレルギー』でしょうか。
肥満細胞は健康な体でも存在していて、普段は主に免疫反応炎症反応に関与しています。
例えば花粉症の方が花粉にまみれたりすると、この細胞が張り切りはじめて色んな物質を放出し始めます。
色んな物質の中でも代表的なのが『ヒスタミン』
これがたくさん放出されると、血管の拡張や過敏性反応がおこります。
私たちの身体では目がかゆくなったり鼻水がどばどば出たりしてしまうのはこれのせいですね。

肥満細胞はどんな動物でも持ってるものですから、太ってる太ってないは関係ないのです。
(アレルギー体質だとできやすいということもないですよ~)


この肥満細胞が異常に増殖してしまって(腫瘍性増殖)できたモノが『肥満細胞腫』
実は犬の皮膚腫瘍の20%と最も発生の多い厄介者です。

また、厄介な理由はこの腫瘍の特徴にあります

①とにかく根っこが深い
②イボそっくりに擬態する
③若い子でも発生する


主にこの3つ!

①とにかく根っこが深い

全ての腫瘍には根っこがあります。(根っこというと語弊がありますが、腫瘍細胞が波及している範囲と考えてください)
その根っこが、肥満細胞腫はダントツに深い(広い)んですね~

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腫瘍を取る時は、根っこを取り残してはいけません。
特に悪性腫瘍は細胞の増殖が活発ですから、取り残せばすぐに再発してしまいます。

この根っこが深いということは、広く大きく取らなければならない。
つまり取るのがとっても大変なんですね

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小さなできものでも侮るなかれ、取り除くには何倍もの大きさで切除しなきゃいけない場合もあるのです。

②イボそっくりに擬態する

『偉大なる詐欺師』
肥満細胞腫のカッコいい通り名です(笑

肥満細胞腫にはいろんな見た目があります。
表面がただれていたり、いかにも悪そうな見た目のモノから、よくあるイボそっくりのモノまで本当に様々です。

厄介なのはイボそっくりのもの。
見た目が派手なものなら飼い主さんも心配するんですが、イボそっくりであれば見つけても油断してしまいますよね。
『イボかと思ったら赤く大きくなってきて~』
と言って来られる飼い主さんも多いです。


③若い子でも発生する

これは書いた意味の通り。
基本的に腫瘍は高齢で発生しやすい傾向にあります。

もちろん肥満細胞腫も同様に高齢の子での発生率の方が高いのですが、
他の腫瘍と比べて若い子での発生が多いです。


さて、②③が組み合わさると大変。
飼い主さんだけでなく、私たちも油断してしまうこともありますから。
小さなできものを見つけて
『多分イボでしょうね~』
なんて検査をしたら肥満細胞腫だった、なんてことも少なくありません。


そんな厄介な肥満細胞腫。
実は他の腫瘍と比べて検査は簡単なんです。

方法は針生検、細い針をできものに刺して、細胞を取ってくる方法です。
動物達の身体に対して最小限のダメージでできる検査方法なので、できものを見つけたら私たちはまず最初に行うようにしています。

肥満細胞ってとっても特徴的な見た目をしてるんですね。
肉眼ではイボにそっくりでも、顕微鏡で見るとすぐに分かるようになっている親切設計。
(もちろん例外あり)


肥満細胞腫の治療方法の基本は外科的切除(手術で取る方法)です。
どの腫瘍でもそうですが、できものを取るには小さければ小さいほど取り切る確率が高くなります。
①に書いた通り、肥満細胞腫は根っこが深いできものですから特にサイズが重要です。
(小さいものなら、飲み薬で治療する場合もありますよ。)

もし、飼っている子の身体にできものを見つけたら、遠慮せず見せてください。
どんな病気も早めに見つけられれば治る確率はグッと高くなります

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猫にも肥満細胞腫、ありますよ~

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