獣医師みやも&ブリ太郎のすったもんだ日記

愛猫ブリ太郎と、動物病院の日常やどうでもいい日々を綴ります。

去勢手術

こんばんはー
最近おでこがかゆいです。
成長するのかな?



さて、昨日は犬の会陰ヘルニアというのがどういった病気なのか書きました。
(ていうか『えいいんヘルニア』って変換できないんですね…ずっとコピペしてます)
今日はその原因についてです。


会陰ヘルニアの原因はちょっと複雑です。
なんせ本来あるべきはずの筋肉が薄くなってしまうんですからね…謎すぎます。

会陰ヘルニアが起こりやすいのは、中~高年齢の未去勢の小・中型犬、
つまり タマタマがついたおじいちゃん犬(小型) です。

会陰ヘルニアの原因として今言われているのは

①雄性ホルモン(男の子ホルモン)
②しっぽの運動性
③腹圧の上昇

この3つです。
①雄性ホルモン
これは現在最も重要視されているものです。
実際、うちの病院でも未去勢の男の子で発生しているのが圧倒的に多いです。
もちろん女の子でも発生することはあるのですが、私はまだ出会っていません。

これについてはたくさんの報告がありますが、アンドロゲンまたはテストステロンという2つのホルモンが関連しているとされています。(どちらも男の子ホルモンですね)

でも実はまだ関連が示唆される(可能性がある)という段階です。
ただ、これまでの報告からも日々の診察からも、早くに去勢手術を受けた雄犬と比較して、未去勢の雄犬の発生率が高いのは事実です。
以前の記事 避妊・去勢手術の必要性 でも触れましたが、会陰ヘルニアは去勢手術で予防できる病気のひとつとして扱っていいと思います。

会陰ヘルニアの手術の際はほとんどのコで一緒に去勢手術を行いますが、同時に去勢手術を行わなかった子達はヘルニア再発率が2.7倍高かったとも報告されています。
このことからも、少なからず男の子ホルモンが関連していることが考えられますね。


②しっぽの運動性

会陰ヘルニアの主な原因は、肛門挙筋尾骨筋が薄くなってしまうことにありますが、
これらの筋肉は尻尾の運動とも深く関係しています。

実際、好発犬種(よくこの病気が起こる犬)としてウェルシュ・コーギー、ボストンテリア、ボクサーといった断尾されている犬種や、M・ダックス、ジャーマン・シェパード、シェルティといった尻尾の運動性が低い(あんまり激しく尻尾を振らない)犬種が挙げられてますし、
逆に尻尾を激しく振りまくるレトリーバー達は発生頻度が極めて低いとされています。

あと、これはちょっと面白いなと思ったんですが、断尾を行ったコーギー犬は、断尾を行わなかったコーギー犬よりも明らかに発生頻度が高かったんですって。
 
尻尾ブンブン振れば鍛えられるんですかね…
やっぱ結局が筋トレがものを言うのでしょうか。


③腹圧の上昇

これは分かりやすいと思います。

そもそもヘルニア孔(穴)ができる原因としてはホルモン等かもしれませんが、
その穴からお腹の中のモノが脱出してしまうのを助長するものとして、
この『腹圧の上昇』が挙げられます。
腹圧の上昇とは、お腹に力が入ってしまうことです。

どういう時に腹圧って上昇するのでしょうか?
犬でいうとやはり

吠える
怒る


の2つが大きいですね。
実際、よく吠える・怒る子で発生が多いように感じます。


……これらが主な原因たちです。
②③については私たちではどうしようもないことかもですが、
①についてはどうでしょう?私たちの手で取り除くことが可能ですよね。

現時点では①が最も大きな原因だとされているので、会陰ヘルニアの予防については去勢手術はとても有効です。

実際に会陰ヘルニアになってしまったら、基本的に治療方法は手術です。
会陰ヘルニアの手術って結構大変なんです。
お金だって結構かかります。予防できるならしたいですよね…

やはり、去勢手術は早めにするに越したことはない!
会陰ヘルニアの手術をするたびに思うのでした……

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ちなみに猫ではほとんど起こりません(外傷を除いて)
よかったね!

こんばんはー!
昨日仕事初めをしたと思いきや、一変今日は一日家から出ずに過ごしたよ!
ゼルダしすぎてハイラルから出たくないよ!

さて、そんなは戯言置いといて。
今日は 犬猫の避妊・去勢手術の必要性 についてです。
私は避妊手術について昨日の記事で
人間が飼うなら最低限必要なこと 
と書きました。ではそれはなぜか?

それはずばり
手術しとかないと後で後悔する(ことが多い)から
です!

いや、それがなんだっちゅー話ですよね。

避妊・去勢手術(以下不妊手術)をすることで得られる主なメリットは大きく分けて3つです
①望まない出産が避けられる
②”問題行動”の減少
③病気の予防

①については当たり前ですが、とても重要なことです。
犬や猫たちは、生後6か月程度で赤ちゃんを作ることが可能になります。

『望まない妊娠』というと想像しにくいかもしれませんが、実際はとても多いです。
例えば、庭で自由にさせていたら外からよその犬がやってきて、子どもができてしまったり。
男の子でも、何かのひょうしに外に飛び出してよその家で子どもを作ってきてしまうかもしれません。

『うちの子は大人しいからそんなことしないわ!』

…そうは言ってもそれは普段の話。Heat(発情)中の動物の行動力は予想を超えます。
いつもは外に出ようともしない愛猫が大声をあげながら網戸を破って出ていって、帰ってきたらお腹が大きくて…
なんて嘘みたいな話も全然珍しくないです。
もちろん出入り自由な環境で飼っている子(特に猫)であれば、その危険は特に高いでしょう。

でも、室内や囲われた小屋で飼っている子も油断は禁物!
実際10年以上前、私の実家の雌犬にHeatが来たとき、どこからか雄犬がやってきて頑丈な犬小屋の金網を破って侵入してきたことがありました。(その頃まだ不妊手術をしていなかった)

昨日もお話しした犬猫の年間殺処分数。43000頭のうち約半数は幼猫・幼犬です。
ほとんどは望まない妊娠によって産まれた子達ですから、適切な不妊手術が行われていればこの数はグッと減らせたわけです…。

②はどうでしょうか。
不妊手術を行うと、性ホルモンが原因で起こる問題行動が減少します。
問題行動として有名なのは、雄猫であればのスプレー行動や咆哮、他の雄とのケンカ。雄犬であればマウンティングやマーキングなどですね。
雌の行動はあまり目立ちませんが、やはりHeatの時期はそわそわしますし、かなりストレスが溜まります。(私たちもイライラするんですから…)
問題行動というと、人間から見た困った行動 と捉えられがちですが、動物自身への問題というのもあるんですね。
いずれにせよ、子犬・子猫を産ませる予定はないのであれば、お互いのために不妊手術をすることをお勧めします。

最後に③
これは私たちの立場から言うと1番重要なことです。
不妊手術によって予防できる主な病気を挙げてみます。

【メス】
・子宮蓄膿症
高齢の雌の病気でとっても怖いものの一つです。
症状は下痢や吐き気、食欲不振など分かりにくいものばかり。
発見が遅れれば命に関わる病気です。子宮に膿が貯まる病気ですから、避妊手術で100%防げます。

・乳腺腫瘍
乳腺にできる腫瘍です。
犬では半分は良性、もう半分はいわゆるガンです。猫ではほとんどが悪性に分類されます。
発症には性ホルモンが関わっているとされ、初回発情前に手術を実施すれば発生率は0.05%、2回目までに行えば8%未満に抑えられるとされています。

【オス】
・精巣腫瘍
精巣にできる腫瘍です。
細かく分けるといくつか種類があるんですが、ここでは説明は省きます。
ほとんどは良性ですが、もちろん悪性に分類されることもあります。
腫瘍は高齢になってから発生率が上がりますから、良性悪性いずれにしても手術のリスクは高いです。
これも早めの去勢手術によって確実に予防できます。

・前立腺肥大
雄性ホルモンによって前立腺が肥大してしまう疾患です。
軽度な状態であれば体に影響はほとんどありませんが、重症例になると前立腺によって直腸が圧迫されて排便ができない…なんてことも起こります。
7歳以上の未去勢オスでは、大きさの差こそあれほとんどの子で発症しています。

他にも肛門周囲腺腫や会陰ヘルニアなど、予防できる病気はたくさんあります。
…ふぅ。不妊手術のメリットは以上です。

さて、不妊手術のメリットは分かった。
でも手術によるデメリットはないの?

もちろんあります。リスクとしては以下の3つが挙げられます。

①太りやすくなる
②性格が変わる
③麻酔のリスク


①は術後に困ったこととして飼い主さんから最も言われることです。
これは性ホルモンが減少することで活動量が減ることが原因とされますが、実際は飼い主さんが手術後の犬猫たちをかわいそうに思って甘やかしてしまうことが原因になっていることが多いようです…。
不妊手術後の子用のごはんもありますから、活用してみて下さいね。(ブリも使ってます)

②は問題行動にも関連しますが、不妊手術をすると以前よりも大人しくなる子が多いです。
飼い主さんによっては前の方が元気があって良かった!と思うかもしれません…

③については避けられないことなのですが、動物たちの手術には全身麻酔が必須です。
麻酔への耐性はその子によって違い、術前検査をしっかり行っていても完全に把握することは難しいです。
近年では麻酔薬も安全性の高いものが用いられており、私たちも細心の注意を払って手術を行っています。ですが全身麻酔は場合によって命に関わることもあるため、この3つの中では最も大きなリスクと言えるでしょう。
もちろん高齢で体力が落ちている子ほどリスクは高まりますから、手術を検討している場合は早めに行うことをお勧めします。


不妊手術を拒否される飼い主さんの意見としては
『自然な状態でいさせてあげたい』
『健康な体にメスを入れるなんてかわいそう』
『全身麻酔が怖い』

というものが多いです。

確かに目の前の可愛い盛りの愛犬愛猫たちが痛い思いをするのを見るのは苦しいでしょうし、麻酔の心配は伴うと思います。特に不妊手術は動物医療特有の手術の一つですから、身近にない分迷うのは仕方ないです。
ですが、私たちが働く現場では『早めに不妊手術していたらこんな事にならなかったのに…』と感じてしまう子達がとても多いのです。
高齢になって病気になってから手術をするのとでは、麻酔のリスクは比べ物になりません。もちろんお金もかかります。
予防できる病気で苦しむ動物や飼い主さんを見たくはないんです。
どうか、その子の一生を長いスパンで見てください。


まとめますと、やはり不妊手術は
人間が動物を飼うなら最低限必要なこと
だと思います。人間社会で動物と仲良く暮らすために、長く健康でいさせてあげるために、最小のリスクでできることなんです。

ただ、実際に手術を行う決断をするのは飼い主さんですから、
私は少しでも日々の診察で不妊手術の必要性を伝えられればいいなと思います。



さて、今日は風の谷のナウシカですね!
私はジブリの中でユパ様が1番かっこいいと思います。

ではでは!

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