こんばんは!
梅雨が明けたみたいですね
やっと洗濯物が臭くなくなります…
さて、今回はとある病気『膿胸』について!
膿の胸と書いて『のうきょう』と読みます。(JAではありません 笑)
あまり馴染みのない病気ではないでしょうか…
でも実はこの病気、どの子でもなる恐れのある、こわーい病気なのです
膿胸とは
膿胸は、何らかの原因で胸膜に細菌感染を起こし、胸腔内に膿が貯留してしまう病気です。
ここでは猫の膿胸について触れますが(多いので)、犬ももちろん罹ることはありますし、人間だって例外ではありません。
胸腔とは、肺や心臓が収まっている部位、腹腔内とは横隔膜で隔てられています。
本来胸腔内は真空状態。(だから肺が簡単に膨らむことができるのです)
そんな所に空気が入るだけでも苦しくなってしまいますが(これは気胸と言います)、そこに液体、しかも細菌いっぱいの膿が溜まるとなると、そうとう苦しく、命にも危険が及ぶこともあります…。
原因
そんな恐ろしい膿胸、実はほとんどの症例で、原因は不明です。
…それはなぜでしょうか?
膿胸はじわじわと静かに進行し、ある日突然症状が現れることが多い病気です。
なので、原因と思われる出来事から時間が経ってしまい、結果的に分からなくなってしまうのですね
ですが、膿胸は基本的に細菌感染によって起こりますから、おおまかに原因は絞られます。
・ケンカ(胸部に爪や牙による傷が入る)
・事故(胸部のケガによる感染)
・食道からの傷(尖ったものなどを食べて食道から胸腔へ細菌感染を起こす)
・肺炎(化膿性肺炎の波及)
・腫瘍(二次的な細菌感染)
などなど。
この中でも、圧倒的に多いのは外傷(ケンカ・事故)です。
そんなワケで、自由に外へ行く猫ちゃんに起こることがほとんどです…。
症状
第一の症状はやはり、『呼吸が苦しい』です。
液体が胸腔に溜まれば、肺を圧迫して膨らむのを邪魔しますから、溜まる膿の量が多くなれば多くなるほど苦しくなります。
『苦しくなる』と簡単に言いますが、ネコ達が苦しい時を見極めるのはそう簡単ではありません。
この子達は自分たちが調子が悪いことを隠しますから…
ネコ達は呼吸が苦しくなると、以下のような症状が見られてきます。
・元気がなくなる
・食欲が落ちる
・呼吸回数が多くなる
・鼻をヒクヒクさせながら呼吸する(鼻翼呼吸)
・横に寝られなくなる(肺が圧迫されるので)
・寝ることもできなくなる(犬座姿勢をとる)
・開口呼吸をする
・チアノーゼ(舌色が青白いor青紫色になる)
(たまに若くて元気な子は、めちゃくちゃ暴れ回った後に一時的に開口呼吸をすることはありますが、その時とは顔つきが全く異なります。)
1番客観的で分かりやすいのは呼吸回数ですね。
運動した後は基本的に呼吸が早くなるのは当たり前なので、落ち着いている時…極端に言えば寝ている時に呼吸数を数えてみましょう。
正常時の猫の呼吸数は、1分間当たり20~30回。
(ただ、1分間ずーっと数え続けるのは大変なので、15秒間だけ数えてその数を×4して1分あたりの回数を出します。(私たちもその方法で数えます))
それが1分間に80回、90回も呼吸していたら…
気温が関係していることもありますが、基本的には異常です。
病院での診察を強くおすすめします。
さて、ここまでは胸腔に液体が溜まることで起こる物理的な問題でした。
さらに膿胸では、そこに細菌感染というイヤ~な要素も加わります。
なにしろ胸腔内に溜まっているのはただの液体ではなく、細菌だらけの『膿』ですから…。
もちろん治療が遅れれば症状は全身へ及びます。
場合によっては、菌血症や敗血症、さらにはDIC(播種性血管内凝固)といった恐ろしい合併症を引き起こすことさえあるのです。
これが『膿胸』の致死率が高い理由ですね。
緊急性が高い病気ですから、私たちも見つけ次第大急ぎで処置します
診断
基本的に診断はレントゲンとエコー(胸水の採取)です。
これが膿胸症例のレントゲン写真です。
片方の肺が真っ白になって見えなくなってしまっています。
実際には肺はこの中に存在するのですが、大量に膿が貯留することで見えなくなってしまっているのですね。(レントゲンでは空気は黒く、液体はやや白く写ります)
これだけでは、胸水と鑑別ができませんので、次にエコーを用いて胸水の採取を行います。
そこで膿汁が採取されれば、『膿胸』と診断されるというわけです。
(肺炎や腫瘍の有無はまた別ですが…)
しかし膿胸の診断はそう簡単ではありません。
なにしろ膿胸の子たちは、連れてこられた時点でかなり呼吸状態が悪い子がほとんどですから。
検査も慎重に慎重に行います。
検査中に容体が悪化…なんてことも十分起こり得るので
治療
膿胸の治療は比較的シンプルで、
・胸腔内の洗浄
・抗生物質の投与
が基本的な方法です。
私が勤務する病院では、
①最初に膿汁をできるだけ抜去する。
②呼吸状態をなるべく改善させた状態で胸腔ドレーンを設置・留置する
③ドレーンを使用して胸腔内を洗浄する
④抗生物質を投与
①~④を最低1週間ほど続けます。
その間は入院管理です。(場合によっては酸素室内で)
基礎疾患(腫瘍や肺炎といった他の病気)がなければ、この方法でほとんどの子は改善します。
さてさて、こんなイヤな『膿胸』。
予防できる方法というと、ひとつはやはり『外に出さないこと』です。
やはり大部分が外でのケンカや事故によって起こっていますので。
もちろん室内飼育でもなってしまうことはありますし、いくら気を付けていても防げないこともありますが、外ネコちゃんはリスクが桁違いです。
やはり私たちは、なるべく室内飼育をすることをおススメします。
また、どの病気でもそうですが、病気の早期発見は飼い主さんの観察力がとっても大事です!
いつもと違う様子が見られましたら、お早目に動物病院へ
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梅雨が明けたみたいですね
やっと洗濯物が臭くなくなります…
さて、今回はとある病気『膿胸』について!
膿の胸と書いて『のうきょう』と読みます。(JAではありません 笑)
あまり馴染みのない病気ではないでしょうか…
でも実はこの病気、どの子でもなる恐れのある、こわーい病気なのです
膿胸とは
膿胸は、何らかの原因で胸膜に細菌感染を起こし、胸腔内に膿が貯留してしまう病気です。
ここでは猫の膿胸について触れますが(多いので)、犬ももちろん罹ることはありますし、人間だって例外ではありません。
胸腔とは、肺や心臓が収まっている部位、腹腔内とは横隔膜で隔てられています。
本来胸腔内は真空状態。(だから肺が簡単に膨らむことができるのです)
そんな所に空気が入るだけでも苦しくなってしまいますが(これは気胸と言います)、そこに液体、しかも細菌いっぱいの膿が溜まるとなると、そうとう苦しく、命にも危険が及ぶこともあります…。
原因
そんな恐ろしい膿胸、実はほとんどの症例で、原因は不明です。
…それはなぜでしょうか?
膿胸はじわじわと静かに進行し、ある日突然症状が現れることが多い病気です。
なので、原因と思われる出来事から時間が経ってしまい、結果的に分からなくなってしまうのですね
ですが、膿胸は基本的に細菌感染によって起こりますから、おおまかに原因は絞られます。
・ケンカ(胸部に爪や牙による傷が入る)
・事故(胸部のケガによる感染)
・食道からの傷(尖ったものなどを食べて食道から胸腔へ細菌感染を起こす)
・肺炎(化膿性肺炎の波及)
・腫瘍(二次的な細菌感染)
などなど。
この中でも、圧倒的に多いのは外傷(ケンカ・事故)です。
そんなワケで、自由に外へ行く猫ちゃんに起こることがほとんどです…。
症状
第一の症状はやはり、『呼吸が苦しい』です。
液体が胸腔に溜まれば、肺を圧迫して膨らむのを邪魔しますから、溜まる膿の量が多くなれば多くなるほど苦しくなります。
『苦しくなる』と簡単に言いますが、ネコ達が苦しい時を見極めるのはそう簡単ではありません。
この子達は自分たちが調子が悪いことを隠しますから…
ネコ達は呼吸が苦しくなると、以下のような症状が見られてきます。
・元気がなくなる
・食欲が落ちる
・呼吸回数が多くなる
・鼻をヒクヒクさせながら呼吸する(鼻翼呼吸)
・横に寝られなくなる(肺が圧迫されるので)
・寝ることもできなくなる(犬座姿勢をとる)
・開口呼吸をする
・チアノーゼ(舌色が青白いor青紫色になる)
(たまに若くて元気な子は、めちゃくちゃ暴れ回った後に一時的に開口呼吸をすることはありますが、その時とは顔つきが全く異なります。)
1番客観的で分かりやすいのは呼吸回数ですね。
運動した後は基本的に呼吸が早くなるのは当たり前なので、落ち着いている時…極端に言えば寝ている時に呼吸数を数えてみましょう。
正常時の猫の呼吸数は、1分間当たり20~30回。
(ただ、1分間ずーっと数え続けるのは大変なので、15秒間だけ数えてその数を×4して1分あたりの回数を出します。(私たちもその方法で数えます))
それが1分間に80回、90回も呼吸していたら…
気温が関係していることもありますが、基本的には異常です。
病院での診察を強くおすすめします。
さて、ここまでは胸腔に液体が溜まることで起こる物理的な問題でした。
さらに膿胸では、そこに細菌感染というイヤ~な要素も加わります。
なにしろ胸腔内に溜まっているのはただの液体ではなく、細菌だらけの『膿』ですから…。
もちろん治療が遅れれば症状は全身へ及びます。
場合によっては、菌血症や敗血症、さらにはDIC(播種性血管内凝固)といった恐ろしい合併症を引き起こすことさえあるのです。
これが『膿胸』の致死率が高い理由ですね。
緊急性が高い病気ですから、私たちも見つけ次第大急ぎで処置します
診断
基本的に診断はレントゲンとエコー(胸水の採取)です。
これが膿胸症例のレントゲン写真です。
片方の肺が真っ白になって見えなくなってしまっています。
実際には肺はこの中に存在するのですが、大量に膿が貯留することで見えなくなってしまっているのですね。(レントゲンでは空気は黒く、液体はやや白く写ります)
これだけでは、胸水と鑑別ができませんので、次にエコーを用いて胸水の採取を行います。
そこで膿汁が採取されれば、『膿胸』と診断されるというわけです。
(肺炎や腫瘍の有無はまた別ですが…)
しかし膿胸の診断はそう簡単ではありません。
なにしろ膿胸の子たちは、連れてこられた時点でかなり呼吸状態が悪い子がほとんどですから。
検査も慎重に慎重に行います。
検査中に容体が悪化…なんてことも十分起こり得るので
治療
膿胸の治療は比較的シンプルで、
・胸腔内の洗浄
・抗生物質の投与
が基本的な方法です。
私が勤務する病院では、
①最初に膿汁をできるだけ抜去する。
②呼吸状態をなるべく改善させた状態で胸腔ドレーンを設置・留置する
③ドレーンを使用して胸腔内を洗浄する
④抗生物質を投与
①~④を最低1週間ほど続けます。
その間は入院管理です。(場合によっては酸素室内で)
基礎疾患(腫瘍や肺炎といった他の病気)がなければ、この方法でほとんどの子は改善します。
さてさて、こんなイヤな『膿胸』。
予防できる方法というと、ひとつはやはり『外に出さないこと』です。
やはり大部分が外でのケンカや事故によって起こっていますので。
もちろん室内飼育でもなってしまうことはありますし、いくら気を付けていても防げないこともありますが、外ネコちゃんはリスクが桁違いです。
やはり私たちは、なるべく室内飼育をすることをおススメします。
また、どの病気でもそうですが、病気の早期発見は飼い主さんの観察力がとっても大事です!
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