獣医師みやも&ブリ太郎のすったもんだ日記

愛猫ブリ太郎と、動物病院の日常やどうでもいい日々を綴ります。

2019年02月

こんばんは。
ついさっきまでブリとあれの取り合いをしておりました。
猫も結構好きなんですよね、納豆…



さて!
前回は子宮の病気のエースの話をしました。
今回はうって変わって男の子の話です。

その名も
『潜在精巣』

でもこちらは病気…ではありません。
ではこの潜在精巣とやら、いったい何なんでしょうか?
(今回は犬の例について書きます)


 潜在精巣って? 
犬は、生まれたばかりの時点では精巣はまだお腹の深い位置にあります。
正常であれば生後1か月までの間にお腹の中から陰嚢まで降りてきますが、何らかの理由でその途中で止まってしまっているのが潜在精巣です。

IMG_0870 (1)

つまり、通常の場所(陰嚢内)に精巣が降りてきていない状態のことをそう呼ぶんですね。

潜在精巣には2つのタイプがあります。

①腹腔内陰睾
②皮下陰睾


単純なもので、睾丸が留まっている場所の違いだけですね。
先ほど、子犬の睾丸はおなかの中からゆっくり降りてくると言いましたが、睾丸が陰嚢に降りてくるまでには決まった道順があります。
おなかの中にあった精巣は、鼠径部(足の付け根)から出て皮下を通り、陰嚢に到着します。

潜在精巣たちはその道順の途中でトラブルがあったわけですが、一番引っ込み思案なのが①のパターンですね。
なんせおなかの中からでてこないんですから…
せめておなかの中からくらいは出てきてほしいところ。
だってその後が大変なんですもん(後で書きます)

では②は?
これは少し外にでる気があるみたいですね
根っからの引きこもりではないようです。どちらかというとこちらの方が多いです。

また、ほとんどの場合は片側です。
両側の場合はむしろ形成不全(精巣が作られてない)を疑います。
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 原因は? 

原因ははっきりとは分かっていませんが、遺伝が関係しているとされています。
精巣降りてくるのが途中で止まるだけで、それ以外には体に異常がないのがほとんどです。


 症状は? 

潜在精巣自体には、特に症状はありません。
両側となれば生殖能力には期待できませんが、多くは片側性なので生殖能力に問題はありません。(繁殖には用いない方がよいとされていますが…)

ただ、通常の生活を送っていくには支障を来さないものですが、放っておくと問題があります…。


 潜在精巣の問題 

突然ですが、なぜ精巣はあんなところにぶら下がってるのでしょうか?
おなかのなかにしまってた方が安全だと思いませんか?
だって内臓のひとつなのに…

その理由は、精子が活発になれる温度にあります。
精子の適温は32~34度。体温よりちょっと低いくらいですね。
精子は熱に弱いので、温度が高くなると途端に精子は元気がなくなります。
さらに体温に近い温度に長時間さらされると、精子の生産にも影響を及ぼします。

これが潜在精巣が機能しない原因ですね。

機能しないだけで大人しくしているならいいのですが、
この潜在精巣、厄介なことに 腫瘍化 することが多いのです。
正常な精巣と比べると、精巣腫瘍になる確率は13倍にもなるとの報告もあります。


後に精巣腫瘍について触れようと思いますが、精巣腫瘍は結構キケンです…


 治療方法は? 


毎度おなじみ、去勢手術ですね。
ただ、いつもの去勢手術とはちがいます
場所が違うので、探さないといけません…。

分かりやすい皮下陰睾ならば触って分かるので問題ないのですが、問題は腹腔内の場合。
腹腔内は触っては分からないのでおなかを開けるしかありません。

おなかの中も、簡単に見つかる場合もあれば、なかなかなかなか見つからない場合もあります。
鼠径輪(内股の部分)に引っかかっているパターンが一番大変ですね。
ギリギリ皮下には出ていない…というわがまま睾丸です。

普段ないものを探すのは、いつもあるものを切除するのと比較にならないくらい難しいです…
(入ったばかりの頃、先輩に言われました。)



潜在精巣…
切除に時間がかかったり、いつもと違うところに手術跡ができてしまう場合もありますが、
放っておいていいものではありません。
もし自分の子が潜在精巣だと気づいた場合は、なるべく早く病院で相談してくださいね。


こんばんは!
ただいま出先のネカフェにてこちらを書いております。
一度そういうのやってみたかったんですよね♪
コンソメスープ飲みながら完全に浮かれております 笑


さて、前回子宮蓄膿症がどんなヤツかについて書きましたが、今日はその治療と予防方法についてです。
あ、ちなみにおおよその予想はつくと思いますが、この病気に関しては治療法と予防法は基本同じです。
説明も一瞬で終了します。笑


 治療方法 
ズバリ、避妊手術。(正確には卵巣子宮摘出術ですが)

……言うと思ったでしょ。
でもほんとにそうなんです。

開腹をして膿の溜まった子宮を切除する方法になりますが、
それが1番確実で早く、治療効果の高い方法になります。
唯一根本的な原因を取り除く方法ですからね。
これが1番です。
前回説明した通り、この病気はとても緊急性の高いものですから、見つかったらその日もしくは翌日には手術を行うことが多いです。



でも
『この子はどうしても赤ちゃんを産ませたい!他の方法はないんですか?』
という飼い主さんもいます。

もちろん子宮を切除してしまうと、二度と妊娠することはできませんから
その場合は注射薬(ホルモン製剤)を使って子宮から膿を排出させる&抗生剤で細菌を退治
という方法をとることもあります。
ですが……

正直おススメしません。


というのも
ほとんどが早かれ遅かれ再発するからです
また、強制的に子宮から膿を排出する方法になるので、開放性の子宮蓄膿症にしかこの方法は使えません。
さらには、他の治療薬と比較するとやはり副作用が多いように感じます。
副作用は下痢・嘔吐など、目立ったものはないですが、果たしてこれが注射の副作用なのか、病気の影響なのか判別しにくいところも難点ですね…


私が診ている子(虚弱体質でどうしても手術ができない)でも、この治療方法でなんとか体調を維持している子もいます。(定期的に繰り返しますが…)
ただ、その子たちに関しては飼い主さんがこの病気に対して深い知識と理解を持っていて、発症の兆候があるとすぐ連れて来てくれるからできることでもあります。

状態が悪く、一刻を争う場合は治療の選択の余地すらありませんから…


結論としては
治療方法の基本は手術
(ただし状態次第では他の方法もないわけではない)

です!

 予防方法 

さて、ということは予防は……?

ええ、もちろん避妊手術でございます!

いい加減しつこいですよね 笑

でも、大事なことなのでもう一回説明します。
子宮蓄膿症は 避妊手術 で100%予防できるんです!

方法同じなら、なってからでもいいんじゃ…
と思われるかもしれませんが、それは大きな間違いです。

もちろん治療方法の卵巣・子宮摘出術と避妊手術は基本的に方法は同じですが、危険性には天と地ほどの違いがあります。
ただでさえ状態の悪い子に麻酔をかけるんですから、体への負担は相当なものです。
実際手術をしたって助からない子もいます。

費用だって数倍も違ってきます……


最近は飼い主さんも意識が高くなってきていて、適切に病気の予防ができている子が増えてきましたが、それでもこの病気で辛い思いをしながら病院に来られる子もまだまだ多いです。


この病気に関して私が言いたいのは一つだけです。
子宮蓄膿症は100%予防できる病気です。
赤ちゃんを産ませる予定がないのなら、早めに避妊手術を受けさせてあげてください。
予防できる病気で死なせてしまうことほど、悔しいことはありません…。


長々とありがとうございました!

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