こんばんは!
やっと気温も安定してきましたね…
動物病院は相も変わらず大忙しの毎日です。
暖かいから動きやすいですしね 笑

さて、今回はやっとこさ胃捻転Part2です。

前回は胃捻転の原因と病態について書きました。
今回は胃捻転の症状、治療について簡単に書いていこうと思います



ではさっそくですが…

 症状 

胃捻転が恐ろしいという理由は
症状が突然発生して進行が急激なことと、致死率がとても高いということです。

極端な例では、午前中に症状が出て少し様子を見ていたらみるみるうちに悪化、午後1番に病院に連れていくも、間に合わず…ということもあるくらい、症状は急激です。


この病気になった場合、治療を行っても致死率は15~68%と言われています。
致死率に大きく影響を与えるのは、やはり治療を開始するまでの時間。
私たちも、胃捻転の犬が来院したらとにかく早く処置をするよう言われます


早期発見・早期治療には、いかにこの病気を知っているかがカギになります。
胃捻転の典型的な初期症状としては


・お腹が張る(ガスや内容物で胃がパンパンになる)
・吐きたくても吐けない…もしくは、胃液を吐く
・呼吸が荒く、苦しそう
・落ち着きなくウロウロしている
・お腹を痛そうに丸める


などなど…

やはり胃にガスが貯留して圧迫されるため、呼吸が苦しく強い吐き気を催します。

胃捻転では、時間が経過するほどにガスが貯留します。
さらに完全に捻転している場合、ガスが抜けることはなく貯留する一方なのでどんどん状態は悪化します。

なので、胃捻転は様子を見るというのは厳禁です。


大型犬の子が呼吸が荒く、なんだか何度もウップウップしながら吐きそうで吐かない…

そんな様子が見られたら病院へ直行!!
待ってもいいことはありません!


 治療 

重症度によっても治療の優先順位は変わってきますが
胃捻転の治療は

・貯留したガスの抜去
・ショックの治療
・胃の整復・固定(脾臓の摘出)

の3つが大きなポイントです。


貯留したガスの抜去

これは胃捻転の治療で必須の処置です。
先ほども書いたように、胃捻転ではガスは自然と抜けないので私たちが抜いてあげる必要があります。

この後に書く手術での胃の整復や固定をするにも、胃がパンパンではできないので、とにかく胃のガスを抜く処置は必ず行います。

方法は様々。
身体の外から針を刺して抜くこともあれば、犬を立たせてチューブを口から入れて抜くことも。
いずれも基本的に昔から変わらぬ方法で原始的です。

ただ、昔から方法が変わらないというのも、これらが最もシンプルで早いから。
私たちもこれらの方法で胃ガスを抜きます。


ショックの治療
胃ガスを抜くのと同等、もしくはそれ以上に重要なのがこのショックの治療です。
胃捻転で怖いのがこのショック状態に陥ること。

ショック状態から多臓器不全に移行すれば、それは死に直結しますから、とにかくショックの治療を胃ガス抜去と同時に行います。

基本的に方法は急速な点滴と抗生剤の投与。
専門的な話をすれば、もっと細かなお薬も使いますが、この2つが基本で重要です。

胃捻転の子が運ばれてきたら、私たちがすることはまず血管確保&点滴。準備ができ次第ガス抜去
点滴は流せる最高スピードで流すくらい、多量に流します。


胃の整復・固定(脾臓の摘出)
これは重症の場合に行いますが、私が勤める病院ではほとんどの症例で外科的整復まで行います。
まあ、ほぼ全症例が外科的整復が必要な状態だからなのですが…


胃が完全に捻じれてしまっている場合、ガスを抜くだけでは元に戻るのは難しいです。
また、完全に捻じれていない場合でも、再びガスが貯留してくればもとの状態に戻ってしまうこともあります。
私が勤める病院では、開腹手術にて胃の捻じれを直し、再び捻じれないように胃を腹壁(おなかの内側の壁)に固定します。
さらに、脾臓も一緒に捻じれてうっ血してしまっている場合は、同時に摘出を行うこともあります。



ここまでしても、命を落としてしまうことがある胃捻転…
やはり怖い病気です…



最近では胃捻転のことを知っている飼い主さんも多く、早いうちに連れてきてくれることも多いです。
それは私たちにとってとてもありがたい事。
動物たちにとって1番大切なのは、いつもと違う状態をイチ早く察知してくれる飼い主さんの存在ですから…。
どんな病気であっても当てはまりますが、飼っている子がいつもと様子が違う場合は遠慮せず病院へ連れてきてください。



次回更新は土日のどちらか!